雫井脩介『犯人に告ぐ』上下

犯人に告ぐ〈上〉 (双葉文庫)犯人に告ぐ 下 (双葉文庫)

本の内容
神奈川県下で連続児童殺人事件が発生。特別捜査官・巻島史彦は夜のニュース番組に出演、公開捜査を敢行する。姿見えぬ犯人との対話で事件は解決できるのか? スリルあり感動ありの斬新警察小説!。2004年週刊文春ミステリーベストテン第1位、2005年大薮春彦賞受賞など、数々の賞に輝いた傑作小説が、映画公開に先駆けてついに文庫化。   ――セブンアンドワイより

警察小説、ではある。
だが、知略を尽くした頭脳戦、ではない。
劇場型犯罪と劇場型捜査の華々しい対決を期待したら裏切られるだろう。
わりと話題作だったらしく、映画にもなっているようなのだが、幸い前評判無しに読んだ。
餌を撒き、網を張り、ただひたすら待つ――釣りに似たこれは、忍耐の話だ。
それがこれほどの緊迫感を生むのは、網に綻びをつくる身内であり、水音を立てる大衆であり、私情で網を売ろうとする上司である(違う)
ミステリではない。
どちらかというとハードボイルド寄りかなとは思うけど、藤原伊織みたいにミステリとハードボイルドの境界に立ってる感じはしない。どっちつかずというか中途半端というか地に足がついてない感じはある。
重厚な物語とはいえないが、エンターテイメントとしては十二分に楽しい。
というかある程度軽いのが読みやすくていいよね。
勝利宣言のシーンなんてもうゾクゾクしちゃったよ! 読了後に映画があることを知ったけど、あの台詞をトヨエツが言うなんてちょっとかっこよすぎるんじゃないのっ? うっわーv

読了後にレビュー読むことが多いんだけど、このたびちょっと思った事。
現実的じゃないとかいう酷評って、もうまったく筋も何も通ってないような代物に対してなら分かるけど、ある程度のリアリティがある物語に対してだとどうなのか。
そんなに現実的な話がいいならノンフィクションでも読めよ! とか思っちゃう(苦笑)
ある程度のリアリティすら無い、って判断なのかもしれないけどさー。