「夏と花火と私の死体」乙一

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

夏と花火と私の死体 (集英社文庫)

九歳の夏休み、わたしは殺された――。のどかな田園風景と、明るい夏の光。それにまったくそぐわない死体がひとつ。
乙一さんには前から興味があったのですが、このたびようやくデビュー作を読んだのでした。ホラーって事らしいけど、むしろスリルとサスペンス。ドキドキ感がなかなか巧くて、でもなんというか、気持ちの悪い文章でした(褒め言葉)
なにしろ一人称が殺された「わたし」。死体の「わたし」の淡々とした喋り口がまた奇妙で、服を裏返しに着るような、着れない訳じゃないけどどうにも落ち着かないような、そんな気持ち悪さがずーっと付きまとっているのです。それが味なのでしょうが、駄目な人は駄目かもしれない。
解説で褒めちぎってた程には面白いとは思えなかったんだけど――あの終わり方はちょっと微妙と思うのだけど――この作品でデビュー当時、十七歳というのに愕然。いずれ他の作品も読んでみたいですねー。