完璧な病室・読了

完璧な病室 (中公文庫)

完璧な病室 (中公文庫)

  • 完璧な病室
  • 揚羽蝶が壊れる時
  • 冷めない紅茶
  • ダイヴィング・プール

以上四編の短編集。
この人の書く文章は、一見透明で薄い硝子のような印象を受ける。脆くて、硬質で、透き通っている。
同時に、ひどく有機的な感触がある。それは不定形で不透明の、生き物の体温を持った勁さで、だからどちらに片寄るかでずいぶんと印象が違う。と思う。
「完璧な病室」と「冷めない紅茶」がどちらかというと硝子質で、「揚羽蝶〜」と「ダイヴィング〜」が有機質といった感じだろうか。
以前読んだ「博士の愛した数式」と「密やかな結晶」も硝子質で、淡々として静かで、個人的にはこちらの方が好みではある。