上橋菜穂子 守り人シリーズ

天と地の守り人』全三部
天と地の守り人〈第1部〉 (偕成社ワンダーランド) 天と地の守り人〈第2部〉 (偕成社ワンダーランド 33) 天と地の守り人〈第3部〉 (偕成社ワンダーランド)
天と地の守り人』は、完結して、リクエストの嵐が過ぎ去ってから図書館で借りて読むつもりでいた。
ところが、別のものを借りにいって『神の守り人』と目が合ってしまったのが運の尽き。再読を始めたらずるずる深みに引きずりこまれ、我慢できずに買ってしまった。そして一気に読破。
読了後しばらく、自分が半分くらい“あちら”にいるような気分が抜けなかったデス。
その世界は確かにそこにあって、登場人物が駆け回る場面の外では、食事をしたり子供をあやしたり畑を耕したりしている人がいて。物語が幕を閉じても、生きたり死んだり争ったり助け合ったり、変わらず続いていくんだろうなぁという気持ちが、理屈じゃなく感覚に来る話って案外少ない。
こういう、良質で大きな物語の完結を見届けると、なんともいえない虚脱感が襲ってきます。心地よい疲れと満足感。ぽかりと虚ろで、寂しくて、明るい。
児童書ではあるけれど、子供はもちろん、大人にも是非読んでもらいたいシリーズです。
以下、内容に触れたり触れなかったり徒然なるままに。

バルサがもう最初から最後までかっこいいったら!
そしてチャグムの成長ぶりは目を見張るものがある。若いうちの苦労は買ってでもしろとかいうけど、あんまりな苦労に胸が痛い。
いろんな人のいろんな思惑がこんがらがって、どうなるのかと思ったけど、きれいにまとまったなぁ。帝の最期はお見事でした。
バルサはこの後、タンダの所に腰を落ち着け始めるのかな。どうだろう。
チャグムとバルサは、もう二度と会うことはないのだろうか。そうは思いたくないな。
今はまだ、チャグムも若いし、そんな余裕はないだろうけど。
立派な大人の男になって、国も安定して、ゆっくりと“帝”の在り方も変わっていって、そうしたら。
視察で近くまで来たから――などと言って、宿舎をこっそり抜け出したりして、会いに行ってくれるといいと思う。そういう未来は、あってもいいのじゃないかと思う。
バルサとチャグムを中心にして、この世界の今後が書かれることはないのだろうけれど。タルシュやサンガル等に舞台を移して、まったく別の物語の中で今後の新ヨゴ皇国の様子をちらりと見せてくれないかなぁとか、そんなことも思う。
だってねぇ、いろんな人のいろんな思惑がこんがらがってる割にシンプルで読みやすいのは、中心がハッキリしてるからだと思うのです。いろんな人が出てくるけれども、主人公クラスとの関わりがなくなってすぐ出てこなくなっちゃうキャラがあっちにもこっちにも。とくに『蒼路の旅人』。
海賊船の頭領の少女とか賄いのおばちゃんとか、ほんのちょっとしか出てこないのに妙に印象的なんだな〜。ロタ王の病状やトロガイの今後も気になるし。いつまで生きるんだ、トロガイ。
精霊の守り人 (偕成社ワンダーランド) 闇の守り人 (偕成社ワンダーランド) 夢の守り人 (偕成社ワンダーランド) 神の守り人<来訪編> (偕成社ワンダーランド(28)) 神の守り人<帰還編> (偕成社ワンダーランド(29)) 虚空の旅人 (偕成社ワンダーランド) 蒼路の旅人 (偕成社ワンダーランド (31))