日本の忌みことば

楳垣実/岩崎美術社
忌み言葉を手がかりにして、忌みの発生、性質、範囲、変化を調べていこうという本。図書館でふと目に付いたのです。三十年から前の本だけど、案外面白かった。
私的には、忌み言葉がどうとか言うより『言葉の歴史』に興味津々。

『わが国では、「忌み」のことを古くはユと言ったので、「斎庭(ゆにわ)」という語もあり、これは「斎(い)み清めた神事用の場所」という意味である。また古くは、ミズという語は、英語のwaterと同じように、冷たいのも熱いのも両方に使った。ところがユニワで使うのは熱した水だったため、それをユノミズと呼び、後に省略されてユとなり、漢字「湯」を当てた結果、すっかり別の語となったという。』(47ページから引用)

――へぇぇ〜〜〜。
更には、言葉と文字はイコールではない――というか、話し言葉を文字で現すのには限界があるというのを再確認。

『東北地方ではチとツの区別がないため、イタチともイタツとも聞こえる。〜(中略)〜また東北弁では語頭のイとエとに区別のない土地が多い。そこでイタツなのかエタツなのか、この区別がつけにくい。さらに東北方言ではカ行とタ行(その他)が、語頭以外で濁音化する事が多い。そのため、イダヅ、イダツ、イダズ、イタズのように表現されることがある。そうすると、最悪の場合には、四つの文献に、四種の違った表記で示されている語がじつは全部同一の語であるというような厄介な事態が生じる。』(25ページから引用)

――研究者って大変ですね。
たとえばある語句があって、別の場所に伝わって使われるようになり、時と共に変化して、変化したものが更に変化して、別の意味を含むようになり、しだいに古い意味はなくなっていく――なんて事もあるわけでしょう。いやはや、本当に研究者は大変だ。